
大津欣也(おおつ きんや)氏は、心不全を中心とした循環器医学の研究に長年携わってきた医師・医学研究者です。
大阪大学や海外の研究機関で経験を積み、英国キングス・カレッジ・ロンドンでは循環器科教授を務めました。2021年4月には国立循環器病研究センターの理事長に就任し、日々、循環器医療の発展や医学研究の推進に取り組んでいます。
特に研究分野では、心筋細胞の死やオートファジー、炎症と心不全の関係などについて研究成果を発表してきました。
この記事では、大津欣也氏の経歴や専門分野、主な研究実績について、公開されている情報をもとにわかりやすく解説します。
- 大津欣也とは?循環器医学を専門とする医師・研究者
- 大津欣也の学歴とこれまでの経歴
- 大津欣也の主な研究実績と心不全研究への取り組み
- 国立循環器病研究センターでの大津欣也の活動
- まとめ|大津欣也の経歴と循環器医学への取り組み
大津欣也とは?循環器医学を専門とする医師・研究者

大津欣也氏は、心不全を中心とした循環器医学の研究に取り組んできた医師・医学研究者です。
まずは、大津氏の基本的なプロフィールや専門分野について紹介します。
大津欣也のプロフィールと専門分野
大津欣也氏は、循環器内科学を専門とする医師・医学研究者です。
2021年4月1日付で国立循環器病研究センターの理事長に就任し、2026年9月3日更新の同センターの役員名簿にも理事長として掲載されています。
研究者情報を掲載するJ-GLOBALでは、研究分野が「循環器内科学」、研究キーワードが「心不全」とされています。
これまでの研究活動では、心不全が発症・進行する仕組みを細胞や分子のレベルで調べ、新たな治療法につながる知見を得ることに取り組んできました。
また、国内外の大学や研究機関で診療・教育・研究に携わってきた経歴があります。
循環器医学とはどのような分野なのか
循環器医学とは、心臓や血管に関わる病気の予防・診断・治療などを研究する医学分野です。
代表的な疾患には、心不全、心筋梗塞、不整脈、高血圧など。
日本の死因ランキングで上位に入るものばかりです。
なかでも心不全は、心臓の働きが低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなるなどして、息切れやむくみ、疲れやすさなどの症状が現れる状態です。
心不全にはさまざまな原因があり、病気が進む過程も複雑。そのため、心臓の内部で何が起きているのかを解明する基礎研究が、新しい治療法を考えるうえで重要になります。
大津氏も、こうした心不全の発症・進行に関わる仕組みを研究してきました。
大津欣也の学歴とこれまでの経歴

大津欣也氏は、大阪大学医学部を卒業後、日本国内だけでなく海外の研究機関でも経験を積んできました。
ここでは、大学卒業後から国立循環器病研究センターの理事長に就任するまでの経歴を振り返ります。
大阪大学医学部卒業後、海外の研究機関で経験を積む
大津欣也氏は1977年に大阪大学医学部へ入学し、1983年に卒業しました。
卒業後は大阪大学医学部附属病院の第一内科で研修医として勤務。その後、海外の研究機関で研究経験を重ねています。
国立循環器病研究センターの公式プロフィールによると、主な経歴は以下のとおりです。
| 年 | 主な経歴 |
|---|---|
| 1983年 | 大阪大学医学部卒業、同大学医学部附属病院研修医 |
| 1984年 | 米国国立保健衛生研究所・国立老化研究所研究員 |
| 1988年 | トロント大学バンティングベスト医学研究部研究員 |
| 1991年 | ニース大学生化学センター客員研究員 |
| 1992年 | 大阪大学医学部附属病院医員 |
| 2005年 | 大阪大学大学院医学系研究科助教授(循環器内科) |
| 2008年 | 大阪大学医学部附属病院循環器内科科長 |
| 2012年 | 英国キングス・カレッジ・ロンドン循環器科教授 |
| 2021年 | 国立循環器病研究センター理事長 |
米国、カナダ、フランスでの研究経験を経て、日本の大学病院で循環器内科の診療や研究に携わるようになりました。
大阪大学での診療・教育・研究活動
帰国後の大津氏は、大阪大学を拠点として活動しました。
1997年には大阪大学医学部助手、2002年には大阪大学大学院医学系研究科講師(兼任)、2005年には循環器内科の助教授に就任しています。
さらに2008年から2010年3月まで、大阪大学医学部附属病院の循環器内科科長を務めました。
この期間には、臨床や医学教育に携わる一方、心不全の発症に関係する細胞内の仕組みについて研究を進めています。
特に、心筋細胞の生存や機能維持に関わる研究では、複数の研究者との共同研究によって成果を発表しました。
英国キングス・カレッジ・ロンドンの教授に就任
2012年には、英国キングス・カレッジ・ロンドンの循環器科教授に就任しました。
同時に、英国心臓財団教授(BHF Chair of Cardiology)も兼任しています。
英国では心不全に関する研究を続けるとともに、研究者の育成や国際交流にも関わりました。
国立循環器病研究センターの公式情報によると、英国での活動では、医師だけでなく理工学系の研究者も受け入れ、心不全の病態解明に取り組んでいます。
このように大津氏は、日本国内での診療・研究経験に加え、海外の研究機関でも活動してきました。
大津欣也の主な研究実績と心不全研究への取り組み

大津欣也氏は、心不全が発症・進行する仕組みについて、細胞や分子のレベルから研究を重ねてきました。
ここでは、これまでに発表された主な研究成果と、それらが循環器医学においてどのような意味を持つのかを解説します。
心筋細胞の死と心不全の関係を研究
大津欣也氏の研究テーマの一つが、心筋細胞の死と心不全の関係です。
心筋細胞とは、心臓を収縮させ、血液を送り出す働きを担う細胞を指します。
心筋細胞が傷ついたり失われたりすると、心臓の収縮機能が低下する原因になります。大津氏らの研究グループは、特に次のような細胞死の仕組みに注目してきました。
- アポトーシス:細胞が一定の仕組みに従って自ら死に至る現象
- ネクローシス:強い障害などによって細胞が傷つき、死に至る現象
これらの現象が心不全の発症・進行にどのように関わるのかを、主にマウスを用いた実験で調べています。
国立循環器病研究センターの研究紹介では、2003年の『PNAS』や2005年の『Nature』に関連する研究成果が報告されています。
こうした研究は、心臓の機能が低下する原因を細胞レベルで理解するための基礎となるものです。
オートファジーによる心臓保護の仕組みを解明
大津氏が関わった代表的な研究の一つに、オートファジーと心筋細胞の関係を調べた研究があります。
オートファジーとは、細胞内の不要になったタンパク質や傷ついた細胞小器官などを分解し、再利用する仕組み。
2007年には、大津氏らの研究グループがオートファジーの働きと心臓の機能維持に関する研究成果を医学誌『Nature Medicine』に発表しました。
この研究では、マウスを用いた実験を通じて、通常の状態でもオートファジーが心筋細胞の大きさや心臓の構造・機能を維持するうえで重要であることが示されました。
また、心臓に負荷がかかった際には、オートファジーが心筋細胞を保護する方向に働くことも報告されています。
つまり、細胞内の不要なものを適切に処理する仕組みが、心臓の健康維持にも関係しているということです。
ただし、オートファジーを増やせば必ず心不全が改善するという意味ではありません。その働きは病気の状態や条件によって異なるため、詳しい仕組みを調べる必要があります。
ミトコンドリアと炎症が心不全に及ぼす影響を研究
大津氏らは、心不全と炎症の関係についても研究を進めてきました。
その一つが、2012年に『Nature』で発表された、ミトコンドリアDNAと心不全に関する研究です。
ミトコンドリアは、細胞が活動するために必要なエネルギーをつくる細胞小器官。
通常、傷ついたミトコンドリアは細胞内の分解機構によって処理されます。しかし、その処理がうまく進まないと、ミトコンドリアDNAが炎症反応の引き金になる場合があります。
2012年の研究では、ミトコンドリアDNAを分解する酵素が不足したマウスに心臓への圧負荷を加えると、炎症が強まり、心筋症が進行することが確認されました。
さらに、TLR9と呼ばれる免疫反応に関わる仕組みを抑えることで、心臓の機能低下や炎症が軽減されることも示されています。
この成果は、感染症が原因ではない心臓の炎症について、その発生メカニズムを理解する手がかりとなりました。
心不全の新しい治療法につながる研究
大津氏が関わってきた研究は、心不全の発症・進行に関係する仕組みを明らかにし、新しい治療標的を探ることにつながっています。
例えば、オートファジーによる細胞内の分解機構や、ミトコンドリアDNAによる炎症反応を詳しく理解できれば、従来とは異なる方法で心不全の進行を抑える治療法を検討できる可能性があります。
近年の関連研究では、傷ついたミトコンドリアを選択的に分解する「マイトファジー」や、心筋細胞と線維芽細胞の相互作用なども研究対象になっています。
J-GLOBALには、2025〜2028年の研究課題として、心不全における線維芽細胞と心筋細胞の相互作用、オートファジー性分解の寄与を調べる研究が掲載されています。
ただし、これらは主に基礎研究の段階であり、研究成果がそのまま患者への新たな治療法として確立されたわけではありません。
今後は、動物実験などで得られた知見を人の心不全の診断・治療にどのように応用できるかが重要になります。
国立循環器病研究センターでの大津欣也の活動

大津欣也氏は2021年4月、国立循環器病研究センターの理事長に就任しました。
ここでは、理事長としての役割や、循環器医療の研究推進、人材育成に関する取り組みについて紹介します。
2021年に国立循環器病研究センター理事長へ就任
大津欣也氏は、2021年4月に国立循環器病研究センターの理事長へ就任しました。
国立循環器病研究センターは、大阪府吹田市にある、心臓病や脳卒中などの循環器疾患を専門とする国立高度専門医療研究センターです。
循環器疾患の予防・診断・治療に加え、病気の原因を解明する研究や新しい治療法の開発にも取り組んでいます。
大津氏は理事長として、研究活動だけでなく、センター全体の運営や循環器医療の発展に関わる立場を担っています。
循環器病の研究推進と新たな診断・治療法の開発
国立循環器病研究センターの特徴は、病院と研究所、オープンイノベーションセンターが連携できる体制にあります。
研究で得られた成果を実際の医療に役立てるには、基礎研究と臨床現場の協力が欠かせません。
大津氏は理事長就任時の挨拶で、センター内のさまざまな機能を連携させ、循環器疾患の研究や新しい診断・治療法の開発を進める方針を示しています。
また、企業や大学との共同研究を通じて、医学研究の成果を医療に応用することもセンターの重要な取り組みです。
このように、研究成果を実際の診断や治療につなげるための環境づくりも、センターの役割の一つとなっています。
医療人材の育成と国内外の研究連携
大津氏は、医療人材の育成や研究機関同士の連携にも関わってきました。
英国キングス・カレッジ・ロンドンでは、海外の研究者を受け入れ、心不全に関する共同研究や人材交流に取り組んだ経歴があります。
また、国立循環器病研究センターでは、若手医療従事者の教育を通じて、専門的な医療技術や知識を全国へ広げることも重視されています。
高度な循環器医療を一部の施設だけでなく、さまざまな地域で受けられるようにすることは、循環器医療全体の課題です。
大津氏は、研究者として積み重ねてきた経験を背景に、研究推進と人材育成の両面から循環器医学に関わっています。
まとめ|大津欣也の経歴と循環器医学への取り組み
大津欣也氏は、大阪大学医学部を卒業後、国内外の研究機関で診療・教育・研究に携わってきた医師・医学研究者です。
研究分野では、心筋細胞死やオートファジー、ミトコンドリアDNAによる炎症など、心不全の発症・進行に関わる仕組みの解明に取り組んできました。
2021年には国立循環器病研究センターの理事長に就任し、現在は循環器医療の研究推進や医療人材の育成にも関わっています。
大津氏の経歴と研究実績からは、心不全の仕組みを明らかにする基礎研究と、その成果を将来の医療に結び付ける取り組みの両方がうかがえます。
循環器医学の発展には、こうした研究成果の蓄積と、臨床現場への応用に向けた継続的な取り組みが重要です。